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2026年8月27日

リバウンドしないために、何をするべきか?

結論

■ なりたい身体でいられる生活に、慣らす。

体の状態は、普段の行動の結果でしかない。
やめれば戻る以上、その状態を保てる期間は、その行動を続けられる期間と一致する。
そして行動が続くかどうかは、その行動にどれだけストレスを感じるかに強く左右される。
だから長く維持したいなら、行動そのもののストレスを下げることが、最も合理的な戦略になる。

Contents

そもそもリバウンドとは何か?

言葉の意味を先に決めておきます。
ここが曖昧なままだと、この先の話が全部ぼやけるからです。

この記事では、主に「リバウンド」を使います。

keeepが考える「維持」とは何か

リバウンドを定義したので、その反対側も定義しておきます。

維持とは、体重を固定することではありません。
体重は毎日変動します。
旅行にも行きますし、飲み会もあります。
それらを全部なくすことを維持と呼ぶなら、誰も達成できません。

keeepでは、維持を次の2つで定義しています。

1つめだけでは足りません。
強烈な我慢で横ばいを保っている状態は、いずれ崩れるからです。
だから2つめが必要になります。

日単位ではなく月平均で見るのは、日々の変動に一喜一憂しないためです。
体重は水分や食事内容だけで1〜2kg動きます。
その揺れを見て判断すると、やらなくていい修正をやってしまいます。

この定義がなぜ妥当なのかを、以下で説明していきます。

ダイエットをした人は、どれくらいリバウンドするのか?

多くの人がリバウンドします。
しかも、始める前より太ってしまう人が少なくありません。

Mann, Tomiyama, Westling, Lew, Samuels & Chatman (2007), American Psychologist, 62(3), 220-233

Medicare's Search for Effective Obesity Treatments: Diets Are Not the Answer

エビデンスレベル:中〜高31件の長期追跡研究を対象とした系統的レビュー。GRADE方式でエビデンスの質を評価

この研究では、ダイエットをした人の3分の1から3分の2が、減らした分を超えて体重が増えていました。
つまり痩せる前より太ってしまったということです。

しかも著者らは、これらの研究には方法上の問題があり、どれも「維持に成功した」方向に結果が偏りやすいと指摘しています。
実態はもっと悪い可能性がある、ということです。

もうひとつ重要な点があります。
追跡期間が長いほどリバウンドの量は増え続け、4年から5年追った研究でも、体重の増加が止まる気配はありませんでした。

「そのうち落ち着く」わけではない、ということです。

痩せたあと、体には何が起きるのか?

代謝が落ちます。
ただし、それがリバウンドの主な原因だとは言い切れません。

減量すると、安静時の代謝が下がります。
体重が減った分だけ下がるのは当然ですが、それ以上に下がることが知られています。
これを「代謝適応(metabolic adaptation)」と呼びます。

Fothergill ら (2016), Obesity, 24(8), 1612-1619

Persistent metabolic adaptation 6 years after "The Biggest Loser" competition

エビデンスレベル:低参加者14名の追跡観察研究。極端な短期減量という特殊な条件下の事例

アメリカの減量番組の参加者を6年間追った研究です。
30週間の番組期間中に、参加者は平均58.3kg減量しました。
その6年後、平均41.0kgが戻っていました。
そして安静時代謝は、番組開始前より1日あたり704kcalも低いままでした。

この数字だけを見ると、「代謝が落ちたから戻った」という話に見えます。
ですが、相関のデータを見ると、話はもう少し複雑です。

この論文は、2つの異なる関係を報告しています。

著者らの結論はこうです。
代謝適応は時間が経っても持続し、その時点で体重を減らそうとしている努力に比例した(ただし不完全な)反応である。

つまり代謝の抑制は、「痩せた状態を保っていること」に伴って現れます。
リバウンドを引き起こす原因というより、痩せた状態に付随する現象に近い、という読み方になります。

ここは慎重に書いておきます。
この論文は代謝適応の重要性を否定していません。
むしろタイトルのとおり、その持続性を強調しています。

僕がこの研究から言えると考えるのは、次の一点だけです。
「代謝が落ちた人ほど戻った」という単純な因果は、このデータからは出てこない。

さらに、代謝適応そのものへの反論もあります。

Martins, Gower & Hunter (2020), The American Journal of Clinical Nutrition

Metabolic adaptation is an illusion, only present when participants are in negative energy balance

エビデンスレベル:中既存データの再検討にもとづく論考

この立場では、代謝適応はエネルギー収支がマイナスのとき、つまり減量が進行しているあいだにだけ観測される現象であり、体重が安定したあとまで続く恒久的な障害ではない、と主張されています。

なお、この主張に対しては Ravussin による反論も発表されており、論争は決着していません。

ただ、僕がここから引き出す結論はひとつです。

代謝は確かに落ちる。しかも長く続く。けれど、リバウンドの犯人を代謝だけに求めるのは無理がある。

そして、これは悪い知らせではありません。
体の問題なら手の打ちようがありませんが、そうでないなら、打つ手があるということだからです。

「飢餓モード」は存在するのか?

一般に言われている意味での飢餓モードは、確認されていません。

「飢餓モード」「省エネモード」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
食べる量を減らしすぎると体が省エネになって痩せなくなる、あるいはかえって太る、という説明です。

これを検証できる、決定的な記録があります。

Keys ら (1950), The Biology of Human Starvation(ミネソタ飢餓実験)

第二次世界大戦中に実施された、半飢餓状態が人体に与える影響の研究

エビデンスレベル:中32名の男性を約24週間、統制下で観察した実験。対象は非肥満の男性であり、また目標減量率を達成するため摂取カロリーが調整されていた。現代の減量にそのまま当てはめることはできない

参加者は約24週間にわたり、通常のおよそ半分のカロリー(1日約1,560kcal)で生活しました。
結果、体重は平均で約25%減りました。

重要なのはここです。

全員が最後まで痩せ続けました。太った人は一人もいません。

代謝は確かに大きく落ちました。
それでも、減量が止まることはありませんでした。

ただし、この実験の設計には注意すべき点があります。
研究者は目標の25%減を達成させるため、参加者ごとに摂取カロリーを調整していました。
つまり「食べる量を一定にしたまま、痩せなくなるかどうか」を自然な状態で観察した実験ではありません。

それを踏まえたうえでも、言えることはあります。
エネルギーが不足している状態で、体重が増えた人はいなかった、という事実です。

「食べていないのに太る」という現象は、この実験では起きていません。

ただし、この実験にはもっと重要な発見があります。

参加者には、食べ物への異常な執着、思考の硬直、抑うつ、そして再び食べられるようになったときの制御不能な過食が現れました。
実験が終わったあとも、食べ物との関係が元に戻らなかった人がいます。

極端な制限の本当の代償は、代謝ではなく心のほうに出る。

これが、僕がこの実験から受け取っている一番のメッセージです。

なぜ「維持する」ほうが難しいのか?

痩せることには終わりがありますが、維持に終わりはないからです。

減量は、期限のあるプロジェクトです。
目標体重という到達点があり、そこに着けば一段落します。
だから多くの人は、期限つきの努力ができます。

一方、維持には到達点がありません。
「今日で維持は終わり」という日は来ません。
終わりのない運用です。

ここで、トレーニング科学の基本原理が効いてきます。

Mujika & Padilla (2000, 2001), Sports Medicine / Medicine & Science in Sports & Exercise

Detraining: loss of training-induced physiological and performance adaptations(ディトレーニング研究の代表的なレビュー)

エビデンスレベル:中運動生理学領域の系統的レビュー。個別の介入研究ではなく、既存研究の統合

「可逆性の原理」は、運動生理学ではディトレーニング(detraining)として研究されています。
定義はこうです。

トレーニングによって得られた適応は、活動が減るか止まると、部分的または完全に失われる。

具体的な数字も出ています。

つまり「やめれば戻る」は精神論ではなく、測定された現象です。

そして体重も同じ構造を持っています。
ある体型は、それをつくった行動の結果として存在しています。
行動が止まれば、結果も止まります。

ここから、ひとつの帰結が出ます。

ある状態を保てる期間は、その状態をつくった行動を続けられる期間と一致する。

3ヶ月しか続けられない方法で得た体型は、3ヶ月分しか保てません。
10年続けられる方法で得た体型なら、10年保てます。

だとすれば、問うべきことは「どうすれば早く痩せるか」ではありません。
「この方法を、自分は何年続けられるか」です。

そして続けられるかどうかは、その行動にどれだけストレスを感じるかに強く左右されます。
キツい方法ほど早く痩せますが、キツい方法ほど早くやめます。

この点については、高いモチベーションがリバウンドを招く科学的な理由で詳しく書きました。
意図を強めても行動は半分程度しか変わらないこと、そして「いつ・どこで・何をするか」を事前に決めておく方法に明確な効果が確認されていることを扱っています。

専門家やプログラムを使うと、維持しやすくなるのか?

維持しやすくなります。
ただし、支援が続いているあいだに限られる可能性があります。

まず、支援に効果があるという証拠は複数あります。

Middleton, Patidar & Perri (2012), Obesity Reviews, 13(6), 509-517

The impact of extended care on the long-term maintenance of weight loss: a systematic review and meta-analysis

エビデンスレベル:高継続的ケアの効果を検証した系統的レビューおよびメタ分析

Dombrowski, Knittle, Avenell, Araújo-Soares & Sniehotta (2014), BMJ, 348, g2646

Long term maintenance of weight loss with non-surgical interventions in obese adults: systematic review and meta-analyses of randomised controlled trials

エビデンスレベル:高ランダム化比較試験を対象とした系統的レビューおよびメタ分析

減量プログラムが終わったあとも専門家との接触を続けたグループのほうが、リバウンドが小さいことが確認されています。

ただし、ここには重要な留保があります。

「専門家をつければ一生リバウンドしない」という証拠はありません。
あるのは、支援が続いているあいだは維持しやすいという証拠です。

だとすれば、結論はこうなります。

必要なのは、終わりのある指導ではありません。
終わらない関与です。

3ヶ月で卒業するプログラムが機能しにくいのは、支援が終わった時点で効果も終わるからです。
これは、keeepが高額な回数券を販売しない理由のひとつです。

維持できている人は、何をしているのか?

共通する行動が、いくつか報告されています。

アメリカには、減量を長期間維持している人だけを集めた登録データベースがあります。

National Weight Control Registry(Klem ら 1997、Wyatt ら 2002、Wing & Phelan 2005 ほか)

13.6kg以上の減量を1年以上維持している人を対象とした登録研究

エビデンスレベル:低自己選択された参加者の観察研究。前向き研究ではないため因果関係は示せない。参加者の96%が白人、80%が女性、55%が大卒と偏りが大きい

この登録者に共通する行動として、次のようなものが報告されています。

ただし、この数字の読み方には注意が必要です。
この研究は「維持できている人が何をしているか」を調べたものであって、「これをやれば維持できる」ことを示したものではありません
研究者自身が、因果関係は結論できないと明記しています。

参加者の偏りも無視できません。
96%が白人で、80%が女性で、半分以上が大卒という集団の話です。
「成功した人だけを集めた」という時点で、そもそも偏りがあります。

それでも、僕がこのデータで重要だと考えるのは、朝食でも運動時間でもありません。
体重を定期的に測っているという一点です。

測るという行為は、自分の状態を把握し続けることを意味します。
言い換えれば、ズレに早く気づく仕組みを持っている、ということです。

keeepが月平均の推移を見るのも、同じ理由によります。
気づくのが早ければ、修正は小さくて済みます。
気づくのが遅れると、修正が大きくなり、その大きさ自体がストレスになります。

なぜ「感じていること」を言えるかどうかが重要なのか?

続くかどうかは、やる気の量ではなく、動機の質で決まるからです。

心理学に「自己決定理論(Self-Determination Theory:SDT)」という理論があります。
その中核をなす基本的心理欲求理論(BPNT)では、人が持続的に行動するために満たされる必要のある欲求として、次の3つが挙げられています。

この理論では、動機づけを量ではなく質で捉えます。
「誰かに言われたからやる」のが統制的動機づけ、「自分で選んでやる」のが自律的動機づけです。

Teixeira, Carraça, Markland, Silva & Ryan (2012), International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 9:78

Exercise, physical activity, and self-determination theory: A systematic review

エビデンスレベル:中66件の実証研究を対象とした系統的レビュー。ただし研究の多くは非実験デザイン

このレビューでは、自律的動機づけと運動行動のあいだに一貫した正の関連が確認されています。
体重管理の文脈でも、自律的動機づけが3年後の減量を予測したという報告があります。

ここから先が、現場の話です。

自律性が満たされるには、自分が何を感じているかを、自分で把握できている必要があります。
そして、それを言葉にできる場所が必要です。

ところが、パーソナルトレーニングの現場では、これが難しくなりがちです。

業界には「痩せたら褒める、太ったら注意する」というやり方が根強くあります。
これは条件つきの承認です。
結果が出たときだけ認める、ということです。

この関係のもとでは、何が起きるか。

クライアントは担当者の顔色をうかがうようになります。
報告のために食事を選ぶようになります。
そして、うまくいかない日ほど連絡しなくなります。

これは統制的動機づけそのものです。
やらされている状態からは、自律性は育ちません。

だからkeeepでは、感じたことをそのまま言える状態をつくることを最優先にしています。

ここで、2種類の情報を区別しておきます。

指導の現場で集まりやすいのは、圧倒的に前者です。
クライアントは「正しいこと」を話そうとするからです。

でも、続く設計をつくるために本当に必要なのは、後者のほうです。
やりたくないことを続ける計画には、最初から無理があります。

だから、こう伝えています。

やりたくないことは、やりたくないと言っていい。
できなかった日は、できなかったと言っていい。
それは報告ではなく、設計に必要な情報です。

言いたくないことは、言わなくてかまいません。
強制ではありません。
ただ、言っていいということだけは、はっきりさせておきたいのです。

ひとつ付け加えておきます。

0か100かで考えてしまうのは、性格の問題ではありません。
厳しいルールを課された人なら、誰にでも起きます。
1回崩れただけで全部やめたくなるのは、ルールが厳しすぎるからです。

だから僕たちが変えるのは、人ではなくルールのほうです。

まとめ

リバウンドは失敗ではなく、生き物として普通の反応です。

そして成功も失敗も、結果ではなく情報にすぎません。
戻ったという事実は、あなたの人格の評価ではなく、「その方法は続かなかった」という一件のデータです。

この情報に向き合いながら、できるだけ低いストレスでよりよい結果に近づいていく。
そのためのアプローチを、keeepではフレキシブル・セルフコントロールと呼んでいます。

そうして意思決定の仕組みが少しずつ修正されていくと、弱くて小さな努力でも、ジワジワ痩せて戻らなくなります。

参考文献

松山 竜樹

この記事を編集した人

松山 竜樹

維持専門パーソナルジム keeep 代表
行動経済学検定2級
全米スポーツ医学協会認定トレーナー(NASM-PES)
株式会社cueee 代表取締役/運動指導歴28年

大学入学までずっと肥満体型。約20kg痩せてちゃんと維持できるまで、20年以上リバウンドをくり返した。そのおかげで意思決定の重要さに気づく。現在はトレーニング理論だけでなく、行動科学について学んだことをセッションに活かしている。

ジワジワ痩せて、戻らない。

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