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2026年10月1日

なぜ、毎回全力で限界近くまで追い込むとリバウンドするのか?

結論

■ 全力は続かず、続かなければリバウンドするから。

自制心が高い人は、我慢が強いわけではありません。考えずにできる形になっているだけです。
毎回限界まで追い込む方法は続けられないので、やめた時点でリバウンドが始まります。keeepでは、終わったあとに心地よさがあり「やってよかった」と思える強度を目安にしています。

Contents

自制心が強い人は、本当に我慢しているのか?

していません。

ダイエットを続けられている人を見ると、意志が強いように見えます。
甘いものを我慢して、疲れていても運動して、誘いを断っているように見えます。

しかし、自制心の高い人が実際に何をしているのかを調べた研究があります。

6つの研究をまとめた調査では、自制心の高さと良い結果を結びつけていたのは、我慢ではなく習慣でした。

自制心の高い人は、欲求を強い意志で抑え込んでいるのではありません。
望ましい行動が、考えずにできる形になっていました。

Galla & Duckworth (2015), Journal of Personality and Social Psychology

More than resisting temptation: Beneficial habits mediate the relationship between self-control and positive life outcomes

エビデンスレベル:中6研究。多くが横断・自己報告で、習慣が原因であることを実験的に示したものではない

つまり、「意志が強いから続く」のではありません。
「考えなくて済むから続く」のです。

我慢すれば、目標は達成できるのか?

我慢した回数は、目標の達成とほとんど関係がありませんでした。

日常生活の中で、誘惑に出会った場面と、それを我慢した場面を記録してもらった研究があります。

結果は、多くの人の感覚とは違うものでした。

我慢した回数が多い人ほど目標を達成できていた、という関係は見られませんでした。
関係していたのは、誘惑に出会った回数のほうです。

誘惑に出会う回数が多い人ほど、目標を達成できず、疲れも感じていました。
達成できていたのは、そもそも誘惑に出会う場面が少なかった人でした。

Milyavskaya & Inzlicht (2017), Social Psychological and Personality Science

What's so great about self-control? Examining the importance of effortful self-control and temptation in predicting real-life depletion and goal attainment

エビデンスレベル:中経験サンプリングによる観察研究。誘惑の頻度と達成率の関連は相関であり、因果関係を示したものではない

「今週は3回も我慢できました」という報告は、良い報告に見えます。
しかし見方を変えると、我慢しなければならない場面が3回もあったということです。

我慢が必要な場面が続いているなら、選んだ行動か強度のどちらかが合っていません。

意志力は、使うと減るのか?

科学的にはかなり怪しいです。

「意志力には残量があって、使うと減っていく」という話を聞いたことがあると思います。
自我消耗と呼ばれる説で、ビジネス書や自己啓発の分野で広く紹介されてきました。

この説に沿って、こんなアドバイスがされることもあります。

「意志力が残っている朝のうちに運動する」
「夜は意志力が減っているから、甘いものに負けやすい」

しかし、この説を23の研究室が同じ手順で同時に検証したところ、効果はほとんど確認されませんでした。

Hagger ら (2016), Perspectives on Psychological Science

A multilab preregistered replication of the ego-depletion effect

エビデンスレベル:高23研究室による事前登録済みの多施設同時追試。ただし検証されたのは特定の課題形式に限られる

「意志力の残量」を前提にした計画は、根拠として使えません。

疲れているときにできないのは、意志力を使い切ったからではありません。
その行動が、そもそも意志力を必要とする形になっているからです。

ストレスレベル2〜4とは、どのくらいなのか?

終わったあとに心地よさがあり、「やってよかった」と思える強度です。

keeepでは、行動に対するストレスを0〜10で考えています。

レベル 状態
0〜1 やったことを忘れるくらい
2〜4 終わったあとに心地よさがあり、「やってよかった」と思える
5〜7 終わったあと「疲れた」「やっと終わった」と感じる
8〜10 やる前から気が重い
5〜7以上(避ける) 2〜4(目安)
運動 週3回ジムで60分 週1回、家で10分
食事 間食をやめる 間食を1日1回までにする
記録 毎食記録する 夕食だけ記録する

■判断のしかた
やる前ではなく、終わったあとの感覚で判断します。
※やる前は「これくらいできそう」と思いがちなので、あてになりません。

この基準は、keeepの指導経験から決めたものです。
そして運動の分野では、研究とも一致しています。

運動中に感じた心地よさと、その後の運動習慣の関係を調べた研究があります。
運動中に心地よさを感じていた人ほど、半年後も1年後も運動を続けていました。

Williams ら (2008), Psychology of Sport and Exercise

Acute affective response to a moderate-intensity exercise stimulus predicts physical activity participation 6 and 12 months later

エビデンスレベル:中少人数の前向き観察研究。運動中の感情とその後の運動の関連を見たもので、因果関係を示したものではない

では、どのくらいの強さなら心地よさが保てるのか。

運動の強さと感情の関係をまとめたレビューでは、はっきりした境目が確認されています。
息が弾んで、会話が途切れ途切れになり始めるあたりです。

この境目より軽い運動では、多くの人が心地よさを保てます。
境目を超えると、ほぼすべての人で心地よさが下がっていきます。

この境目を、専門的には換気性作業閾値(VT)といいます。

Ekkekakis ら (2011), Sports Medicine

The pleasure and displeasure people feel when they exercise at different intensities

エビデンスレベル:中強度と感情の関係をまとめたレビュー。対象は運動場面に限られ、食事や記録の負荷には直接当てはまらない

毎回限界近くまで追い込む運動は、この境目を大きく超えています。
やっている最中は苦しく、終わったあとは「やっと終わった」と感じます。
そしてその記憶が、次に始めるときのハードルになります。

食事と記録については、同じような研究はまだ十分にありません。
ただkeeepでは、同じ考え方で強度を決めています。

余裕を残すと、効果が足りないのではないか?

効果を出すことが目的ではありません。

この問いが出てくるのは、ダイエットを「効果を出す期間」として見ているからです。

その見方だと、終わりがあります。
効果の大きい方法を選び、一定期間やり切って、終わる。
良し悪しは効果の大きさで決まります。

keeepが目的にしているのは、別のことです。

いま「効果のある行動」だと思っているものが、当たり前の日常になること。

この見方に変えると、問いが変わります。

効果の高い行動を短期間やっても、日常は変わりません。
やっている間は特別なことをしている状態で、やめれば元の日常のままです。

軽い行動を続けると、それが普通になります。
普通になったものは、効果を意識しなくても続きます。

多くの人は、この順番を逆にしています。
効果を先に取りにいって、あとから習慣にしようとします。
しかし効果の大きい行動はキツいので、当たり前になる前に止まります。

効果は、あとから勝手についてきます。
当たり前の日常が続いた結果として、自動的に手に入るだけです。

そのためには、当たり前になるまで続けられる状態を、先に整えておく必要があります。
ストレスレベル2〜4は、そのための準備です。

→ 関連記事:なぜ、科学的根拠のある効果的な方法を選ぶとリバウンドするのか?

追い込んで得たものは、残るのか?

やめれば失われます。

トレーニングをやめたあと、体がどう変わるかをまとめたレビューがあります。

持久力の指標は、数週間の中止で下がり始めます。
特に、トレーニングを始めて間もない人が得た向上分は、短期間の中止で一部または全部が失われていました。

Mujika & Padilla (2000), Sports Medicine

Detraining: Loss of training-induced physiological and performance adaptations. Part I

エビデンスレベル:中レビュー。対象の多くは競技者やトレーニング経験者で、一般の運動実践者にそのまま当てはまるとは限らない

追い込んで短期間で得たものは、この「始めて間もない人が得た向上分」にあたります。

しかも追い込む方法は続かないので、やめる確率も高くなります。
「早く手に入る」と「早く失われる」が、セットになっています。

まとめ

これまで、何度も本気を出してきたと思います。

食事を大きく変えて、運動を毎日やって、誘いも断ってきた。
そしてそのたびに結果は出て、そのたびにリバウンドしてきました。

本気が足りなかったのではありません。
本気は、続かない性質を持っているのです。

毎回限界近くまで追い込むやり方は、気合いが入っているうちは続きます。
しかし気合いは必ず下がり、下がった時点で止まります。
そして止まった時点で、リバウンドが始まります。

必要なのは、もう一度本気を出すことではありません。
本気を出さなくても回る状態をつくることです。

ただ、ちょうどいい強度を自分で見つけるのは、意外と難しいものです。

やる前の感覚はあてにならず、つい強めに決めてしまいます。
逆に軽くしすぎると、「こんなことで痩せるのか」と不安になり、また強くしてしまいます。

keeepでは、終わったあとの感覚を一緒に確認しながら、あなたにとってちょうどいいメニューを探していきます。
これまで何度も本気を出して疲れてしまったなら、一度ご相談ください。

参考文献

松山 竜樹

この記事を編集した人

松山 竜樹

維持専門パーソナルジム keeep 代表
行動経済学検定2級
全米スポーツ医学協会認定トレーナー(NASM-PES)
株式会社cueee 代表取締役/運動指導歴28年

大学入学までずっと肥満体型。約20kg痩せてちゃんと維持できるまで、20年以上リバウンドをくり返した。そのおかげで意思決定の重要さに気づく。現在はトレーニング理論だけでなく、行動科学について学んだことをセッションに活かしている。

ジワジワ痩せて、戻らない。

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