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2026年9月18日

なぜ、科学的根拠のある効果的な方法を選ぶとリバウンドするのか?

結論

■ 効果の大きさは、実行されなければゼロになる。

論文が示す効果は「その通りに実行した場合」の数字です。実行できるかどうかは、別の問題として扱われています。
どれだけ効果的な方法でも、続かなければ結果はゼロに近づきます。最初に決めるのは何が効果的かではなく、何ならできるかです。

Contents

科学的根拠のある方法なら、うまくいくのではないか?

実行できれば、そうなります。

たとえば、こんな1日を思い浮かべてみてください。

朝5時に起きて、10kmのランニング。
朝食は野菜サラダとゆで卵。
昼食は玄米に生卵のTKG、それに味噌汁。
間食はナッツとプロテイン。
仕事終わりにジムで60分の筋トレ。
夕食は鶏むね肉と温野菜を20時まで。
入浴後にストレッチをして23時就寝。

これが一生続けられれば、確実に痩せますし、若々しいまま健康的に過ごせます。

ただ、続けられる人はほとんどいません。

ここが見落とされがちなところです。
論文が示している効果は、「その通りに実行した場合」の数字です。

研究では、参加者に実行してもらう仕組みが用意されています。
定期的に測定に来てもらい、指導者がつき、記録を提出してもらいます。
そういう環境で出た数字が、効果として報告されます。

しかし日常生活には、その仕組みがありません。
そして「どのくらい実行できるか」は、たいてい研究の外側の問題として扱われます。

実際に得られるものは、この2つの掛け算で決まります。

効果の大きさ × 実行できる割合

効果が2倍の方法でも、実行できる割合が5分の1なら、合計は下がります。
効果の高い方法を月に2回やるより、効果の低い方法を毎日やるほうが、合計は大きくなります。

多くの人は、効果の大きさだけを見て方法を選んでいます。
実行できる割合を考えていないので、続かない方法を選び続けることになります。

モチベーションを上げれば行動は改善するのか?

おそらく、期待しているほど変わりません。

「やる気さえ出れば続けられるのに」
そう感じたことがあると思います。

だからダイエットを始めるとき、多くの人はまずモチベーションを上げようとします。
なりたい体の写真を見る、成功談を読む、決意を宣言する。

しかし、意図とその後の行動を調べた研究があります。

47件の実験をまとめた分析では、意図を強めること自体には成功していました。
ところが、その結果として起きた行動の変化は、意図の変化に比べてかなり小さいものでした。

Webb & Sheeran (2006), Psychological Bulletin

Does changing behavioral intentions engender behavior change? A meta-analysis of the experimental evidence

エビデンスレベル:高意図を無作為に操作した47件のメタ分析。対象行動は健康行動全般で、減量に限定した結果ではない

「やる気が出れば動ける」という前提が、そもそも成り立っていません。

しかもモチベーションは、時間とともに下がります。
始めた日がいちばん高くて、そこから減っていきます。

つまりモチベーションを前提にした計画は、二重に不利です。
上げても行動はあまり動かず、その上げた分も維持できません。

必要なのは、モチベーションが下がっても残る選び方のほうです。

「やったほうがいいこと」は、なぜ続かないのか?

主語が自分ではないからです。

自己決定理論では、人が行動する理由をいくつかの段階に分けて考えます。
ざっくり言うと、他人軸で動いている状態と、自分軸で動いている状態の違いです。

段階 どういう状態か ダイエットでの例
外的調整 他人軸 他人の指示や、報酬・罰で動いている トレーナーに言われたから。健康診断で指摘されたから
取り入れ的調整 他人軸 やらないと罪悪感がある、という状態で動いている サボると自分が許せない。周りに申し訳ない
同一化的調整 自分軸 自分にとって必要だと納得して動いている この生活を続けたいから、これはやっておきたい

「やったほうがいいこと」は、上の2つから出てきます。

外的調整は、言われなくなった時点で理由が消えます。
指導が終われば、やる理由もなくなります。

取り入れ的調整は、罪悪感が薄れた時点で理由が消えます。
体重が落ち着くと、サボっても気にならなくなります。

どちらも理由が自分の外側にあるので、外側が変われば止まります。

なお、他人軸が悪いという話ではありません。

「ジムの予約が入っているからやる」という理由で運動が続いているなら、それで問題ありません。
行動が身につく過程では、たいていこの段階を通ります。

注意したいのは、理由が外側にあると、外側が変わったときに止まりやすいという点だけです。

そして取り入れ的調整は、見分けるのが難しいところです。
誰かに言われているわけではないので、自分で決めたように感じます。

→ 関連記事:keeepが提供するメンタル・フィットネスとは?

Ryan & Deci (2000), American Psychologist

Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being

エビデンスレベル:低理論の提示であり、実証研究ではない

運動の分野でも、同じ傾向が確認されています。
66件の研究をまとめた系統的レビューでは、自分で選んでいるという感覚と、運動の継続に一貫した関連がありました。

Teixeira ら (2012), International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity

Exercise, physical activity, and self-determination theory: A systematic review

エビデンスレベル:中運動領域66件の系統的レビュー。ただし多くが横断研究で、因果関係は確定していない

「これならできそう」は、どうやって見つけるのか?

「◯◯のためならやってもいい」と思えるか?で判断します。

■やり方

  1. 目的のために「やったほうがいい」と言われていることを思い浮かべます
  2. 思い浮かべた中から「目的のためならやってもいい」と思える行動を選びます
  3. 選んだものを「目的のためならやってもいい」と思える強度でやってみます
  4. やってみて、「これくらいならやれそう」と確認できたら続けます

※「◯◯」= 自分で決めた目的

「痩せたほうがいいと言われたから」ではなく、「この服をまた着たいから」のように、自分の言葉になっているかを確認してください。

人に相談して決めても構いません。
知らない選択肢は自分では選べないので、むしろ相談したほうが幅は広がります。
ただし最後に、自分で「これならやってもいい」と思えるかどうかを確認します。

強度の決め方は、条件③の話になります。

→ 詳しくはこちら:なぜ、毎回全力で限界近くまで追い込むとリバウンドするのか?

効果の小さいことをやって、意味があるのか?

この段階での目的は、効果ではなく行動の0→1です。

効果の小さいことを選ぶと、たいてい不安になります。
「こんなことで痩せるのか」と感じるからです。

ただ、0は何倍しても0です。
実行できない行動は、効果がどれだけ高くても結果を生みません。

まずは1つ、軽いものから始めます。
効果を上げていくのは、そのあとの段階です。

1つできるようになると、次が選びやすくなります。
「自分はこれくらいならできた」という実績が、判断材料になるからです。

逆に、最初から効果の高い行動を選ぶと、できなかった経験だけが残ります。
そして次に選ぶとき、材料になるのはその経験です。
「自分はどうせ続かない」という前提から選ぶことになるので、さらに選びにくくなります。

最初の1つは、軽ければ軽いほど確実です。

まとめ

痩せる方法を、あなたはもう知っているはずです。

足りないのは知識ではありません。

「何をするべきか?」は、方法が主語の問いです。
正しい方法さえ見つければ痩せられる、という考え方です。
でも正しい方法なら、もう何度も試したはずです。

必要なのは「何ならできるか?」という問いです。
こちらは、あなたが主語になります。

ただ、この問いは一人で答えるのが難しいものです。

自分の中から出てくるのは、たいてい「やったほうがいいこと」のほうだからです。
長く見聞きしてきた基準は、自分の考えと区別がつきにくくなっています。

もうひとつ、選択肢の問題もあります。
知っている方法の中からしか選べないので、軽くてそれなりに意味のある行動は、なかなか出てきません。

keeepでは、あなたの生活のどこに余白があって、何なら負担なくできるのかを、一緒に探します。
効果の高い方法をやらない、という話ではありません。
あなたが納得したうえで「やりたい」と言うなら、それに合わせます。
ただし、こちらから一方的に強制したり、プレッシャーをかけたりすることはしません。

自分にできることは、自分ではわかりにくいものです。
もしあなたも、自分に何ができるかお悩みなら、ぜひ一度keeepでご相談ください。

参考文献

松山 竜樹

この記事を編集した人

松山 竜樹

維持専門パーソナルジム keeep 代表
行動経済学検定2級
全米スポーツ医学協会認定トレーナー(NASM-PES)
株式会社cueee 代表取締役/運動指導歴28年

大学入学までずっと肥満体型。約20kg痩せてちゃんと維持できるまで、20年以上リバウンドをくり返した。そのおかげで意思決定の重要さに気づく。現在はトレーニング理論だけでなく、行動科学について学んだことをセッションに活かしている。

ジワジワ痩せて、戻らない。

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