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2026年10月21日

フレキシブル・セルフコントロールとは?

結論

■辛く苦しいガマンは続かないが、ストレスレベルの低い柔軟な取り組みは続きやすい。

フレキシブル・セルフコントロールは、行動に幅をもたせ、小さな努力を続けながら微調整していく考え方です。
keeepの指導はすべて、この考え方を土台にしています。
限定合理性、柔軟な抑制、習慣形成などの研究をもとにしています。

Contents

フレキシブル・セルフコントロールとは何か?

フレキシブル・セルフコントロールとは、「絶対に〜しない」と決めて守るのではなく、「〜はこの程度はやるが、それ以上は求めない」という幅をもたせて、自分の行動を調整していく方法です。
全力の努力ではなく、小さな努力から始めます。
そして、続けながら少しずつ微調整していきます。
keeepのすべての指導は、この考え方を土台にしています。

※学術的には「柔軟な抑制(flexible control)」と呼ばれる考え方をもとにした、keeep独自の呼び名です。

硬直型と柔軟型は、何が違うのか?

■硬直型
『○○のために、絶対に□□しない(する)』

■柔軟型
『○○のために、□□は▽▽程度はやるが、△△までは求めない』

硬直型 柔軟型
食事 痩せるために、絶対に甘いものを食べない 痩せるために、間食は1日1回程度に減らすが、ゼロにすることまでは求めない
運動 体力をつけるために、毎日1時間走る 体力をつけるために、週2回・10分程度は歩くが、毎日やることまでは求めない
記録 毎日欠かさず体重を測って記録する 朝に気づいたら測る程度はやるが、毎日欠かさず測ることまでは求めない

硬直型は、一度守れなかった時点で「もうダメだ」となりやすい方法です。
柔軟型は、守れない日があることを最初から含んでいます。
そのため、崩れても調整して再開できます。

なぜ、柔軟型を選ぶのか?

フレキシブル・セルフコントロールは、食事、運動、意思決定、動機づけの研究をもとにしています。
主なものを紹介します。

1. 人は「完璧な判断」ができない

完全合理性と限定合理性

■分かっていること
経済学では長いあいだ、人はすべての選択肢を比べて最善のものを選ぶ、という前提(完全合理性)が置かれてきました。
ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンは、人は情報も考える力も時間も限られた中で判断している、と指摘しました。
これを限定合理性と呼びます。

■keeepでの使い方
「正しいやり方を知って、全力で頑張れば痩せる」という考え方は、完全合理性を前提にしています。
keeepは、人は限られた余裕の中で判断している、という前提から指導を始めます。

Simon(1955), The Quarterly Journal of Economics

A behavioral model of rational choice

理論研究エビデンスレベルの評価対象外

2. 自分を律する力は、日によって変わる

実行機能

■分かっていること
衝動を抑える、ルールを覚えておく、やり方を切り替える。
こうした力をまとめて、実行機能と呼びます。
実行機能は、ストレス、孤独、睡眠不足、運動不足などの影響を真っ先に受けて落ちることが分かっています。

■keeepでの使い方
仕事が忙しい週や疲れている日には、いつも通りにできなくて当然です。
全力を出し続けることが前提の計画は、こうした日に崩れます。
keeepは、余裕がない日でもできる小さな努力を基準にします。

Diamond(2013), Annual Review of Psychology

Executive functions

総説エビデンスレベルの評価対象外

3. 最善ではなく「十分」で止める

満足化

■分かっていること
サイモンは、人は最善の選択肢を探し続けるのではなく、「これで十分」と思える選択肢が見つかった時点で探すのをやめる、と考えました。
これを満足化(satisficing)と呼びます。

■keeepでの使い方
「どのダイエットが一番痩せるか」を探し続けると、いつまでも始まらず、続きもしません。
keeepは最善の方法ではなく、「これなら続けられる」という十分な方法を選びます。
「▽▽程度はやるが、△△までは求めない」の線引きは、この考え方にもとづいています。

Simon(1956), Psychological Review

Rational choice and the structure of the environment

理論研究エビデンスレベルの評価対象外

4. 硬い我慢より、柔らかい調整

柔軟な抑制

■分かっていること
食べ方の研究では、自分を律するやり方が2種類に分けられています。
「食べない」と決めて守る硬いやり方と、食べたら後で調整する柔らかいやり方です。
硬いやり方の人ほど、一度崩れると食べすぎやすく、過食の回数も多いことが報告されています。
減量に取り組む女性225人を対象にした研究では、1年間のプログラムで柔らかいやり方が身についた人ほど、1年後の減量が大きく、2年後も減った体重を維持できていました。

■keeepでの使い方
keeepは禁止事項を設けません。
好きなものを我慢させるのではなく、食べたあとにどう調整するかを一緒に考えます。

Westenhoefer et al.(1999), International Journal of Eating Disorders

Validation of the flexible and rigid control dimensions of dietary restraint

低横断研究

Teixeira et al.(2010), Obesity

Mediators of weight loss and weight loss maintenance in middle-aged women

中RCTの媒介分析

5. やめれば、効果は失われていく

可逆性の原理(トレーニングの原理)

■分かっていること
運動で得た体力や筋力は、運動をやめると少しずつ失われていきます。
これはトレーニングの基本原則の一つで、可逆性の原理と呼ばれます。

■keeepでの使い方
大事なのは、短期間で大きな結果を出すことではなく、続けることです。
keeepは、短い期間の全力より、ずっと続けられる小さな努力を選びます。

Mujika & Padilla(2000), Sports Medicine

Detraining: Loss of training-induced physiological and performance adaptations. Part I

総説エビデンスレベルの評価対象外

6. 「気持ちよく終われる」が、続く理由になる

感情に基づく運動処方

■分かっていること
運動中に気持ちよいと感じた人ほど、半年後や1年後も運動を続けていたことが報告されています。
また、運動の強さが一定のラインを超えると、運動中の気分が悪くなりやすいことも分かっています。

■keeepでの使い方
「キツいほど効果がある」とは考えません。
キツいほど続かないからです。
終わったときに「これならまたやれる」と思える強さで止めます。

Williams et al.(2008), Psychology of Sport and Exercise

Acute affective response to a moderate-intensity exercise stimulus predicts physical activity participation 6 and 12 months later

中前向き研究

Ekkekakis(2003), Cognition and Emotion

Pleasure and displeasure from the body: Perspectives from exercise

総説エビデンスレベルの評価対象外

7. 自分で決めたことは続きやすい

自己決定理論

■分かっていること
人にやらされている行動は、見張る人がいなくなるとやめてしまいやすいことが分かっています。
それに対して、自分で選んだ行動は長く続きやすくなります。

■keeepでの使い方
「どこまでやるか」は、トレーナーが決めるのではなく、本人と一緒に決めます。
報告の義務や強制もありません。

Ryan & Deci(2000), American Psychologist

Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being

総説エビデンスレベルの評価対象外

8. 続けるのに、モチベーションは要らない

習慣形成/開始と維持の違い

■分かっていること
行動を始めるときと続けるときでは、支えているものが違うと考えられています。
同じ時間・同じ場所でくり返した行動は、少しずつ考えなくてもできるようになります。
そうなった行動は、やる気が下がった日でも続きやすいことが分かっています。

■keeepでの使い方
モチベーションは、スマホの電源ボタンのようなものです。
電源を入れるときは押しますが、押しっぱなしにすると電源が切れてしまいます。
keeepも、やる気は始めるときにだけ使います。
そのあとは、やる気に頼らなくても続く形をつくっていきます。

Wood et al.(2002), Journal of Personality and Social Psychology

Habits in everyday life

低日誌法による観察研究

Gardner et al.(2012), British Journal of General Practice

Making health habitual: The psychology of ‘habit-formation’ and general practice

解説論文エビデンスレベルの評価対象外

Rothman(2000), Health Psychology

Toward a theory-based analysis of behavioral maintenance

理論研究エビデンスレベルの評価対象外

9. 最終的には、自分で調整できるようになる

ブースティング

■分かっていること
人の行動を支える方法には、環境を整える方法と、本人の判断する力を育てる方法があります。
後者はブースティングと呼ばれ、支援がなくなっても本人の中に力が残ることを目指します。

■keeepでの使い方
keeepは、決まったメニューを渡すだけではありません。
「今の自分には何ならできるか」を判断して微調整する力を、身につけてもらうことを目指します。

Hertwig & Grüne-Yanoff(2017), Perspectives on Psychological Science

Nudging and boosting: Steering or empowering good decisions

理論研究エビデンスレベルの評価対象外

よくある質問

Q. ゆるくやって、本当に痩せますか?

A. ただゆるくするだけでは痩せません。
ゆるく続けながら調整し続けることで、リバウンドしにくい形で痩せることを目指します。

Q. 何も我慢しなくていいということですか?

A. 努力0%ということではありません。
50%や100%の努力は続きにくく、リバウンドにつながりやすくなります。
そこで、5%や10%程度の努力を探っていこう、という考え方です。

Q. 一度崩れてしまったら、どうすればいいですか?

A. 崩れることは最初から想定しています。
崩れたら、またできる小さなことから再開します。

参考文献

松山 竜樹

この記事を編集した人

松山 竜樹

維持専門パーソナルジム keeep 代表
行動経済学検定2級
全米スポーツ医学協会認定トレーナー(NASM-PES)
株式会社cueee 代表取締役/運動指導歴28年

大学入学までずっと肥満体型。約20kg痩せてちゃんと維持できるまで、20年以上リバウンドをくり返した。そのおかげで意思決定の重要さに気づく。現在はトレーニング理論だけでなく、行動科学について学んだことをセッションに活かしている。

ジワジワ痩せて、戻らない。

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